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海岸沿いのHidden Beauty・隠れた魅力の数々を精力的に周ってきましたが、少し旅のペースを緩める時間です。今回の龍神温泉は、和歌山県の山の中にある伝統ある温泉保養地。北には世界遺産である高野山、南には熊野古道の巡礼路がありますが、しかしその真ん中に位置しているため、村は静けさを保ったままです。
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上御殿旅館のスタッフさんがお客さんのの到着を待ちます
温泉は8世紀の仏僧であり、高野山を創建した空海によって見つけられ、龍神にこの場所に導かれた夢を見た、と言われています。それが真実かはさておき、温泉は巡礼者にとっても貴族にとっても何世紀もの間お気に入りでした。私が滞在する上御殿(かみごてん)は、もとは紀州藩(現在の和歌山)の大名の山荘でした。
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徳川家の一支系であった紀州の大名の家紋が、今も瓦に見られます。
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私が泊まったのは大名の間です!
明治時代に宿となってからも、数々の著名人が訪れ、例えば小説家の有吉佐和子がこちらに滞在して『日高川』を完成させたり、最近でも有名人や政治家がやってきます。この旅館に惹かれるのは、ここが真のHidden Beauty・隠れた魅力を持ち、お客さんはしばしの間、世間の憂さを逃れてほっとできるからです。
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日高川は温泉の下をまっすぐ流れる川です。水は澄み切っています。
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この床板をどれだけたくさんのゲストが通り続けて来たかがわかります。
旅館の中の色や形が大好きです。シンプルでありながら、細かい所まで繊細な配慮がなされています。
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木下駄が完璧に並んでいます。お客さんはいつでも散策できます。
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玄関の花は毎日活けられます。
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小ふすまの取っ手でさえも、縁起のいいモチーフで浮き彫りに。
同じことが食事にもいえます。
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秋のもみじが今晩の食事を彩ってくれます。
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シンプルなデザートをここまで華麗にするなんて芸術です。
龍神温泉は、日本三大美人の湯のひとつとして知られ、その鉱水を求めてやってくる訪問客もいます。私も自分で入ってみてどれだけ美しくなったかを証明できればと思ったのですが、とても柔らかくしっとりしたお湯であるとわかりました。湯船から外に仰ぐ秋の紅葉の景色はもうひとつの贅沢でした。
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選んでください。この香り漂う木風呂か…
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露天の岩風呂。共に川を眺められます
この温泉で日がなくつろいで、食べ物を楽しみ、周りの小さな村を散歩したりして一日を過ごすのは、簡単にできてしまいます。しかし私は、地元の案内人であるBradさんと大江さんと一緒にこの地域をもう少し散策してみることにしました。高野山方面に山道を運転し、一気に高みまで登ります。そして、この旅で初めての紅葉を見つけられ、ワクワクしました!
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完璧な秋の一日
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高野龍神スカイラインの道です。
私たちは、和歌山県で一番高い峰である、護摩壇山の山頂まで歩いていくことにしました。思っていたよりは少し遠かったですが、山道は素敵で、最後には山々が折り重なるパノラマが見えて、行った甲斐がありました。
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この道も行ってみたくなりました。
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彼方まで広がる山々の連なり
龍神温泉が時空をワープしたどこか別世界との印象を持たれた方に、打ち明けます。地元のホストたちが、私を昼食に連れていってくれた所なのですが…
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地元のファンキーなカフェです
精巧な日本食を頂き続けた日々の後に食べたピザに、後ろめたい喜びを感じてしまったと言わねばなりません。しかし、私たちが食べたのは豆腐ピザですので、あくまで日本的…と言えるでしょう…か。もうひとつ紹介された地元の伝統というのが、チェーンソーアートでした。
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この地域ではかつて林業が栄え、今ではチェーンソーの世界チャンピオンのふるさとです。
精力的な一日を終え、上御殿に戻り、もう一度お風呂の時間です。
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上御殿のような日本の伝統的な建物は、夜になるとお客さんを迎え入れるあかりが灯されます。
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入浴後、浴衣の上に着るこの羽織の色調も、秋に完璧にフィットです。
それではまたね!
翻訳:We Love Japan Tour 事務局・中山慶